Labo-A作品No.3 『Take Off 君の夢が聞こえる』設定集・5

望月 信典(もちづき のぶすけ)

 日本陸軍少将。予想される超大国・帝政ロシアとの戦争に備え、開発中の飛行機を軍事利用しようと幸吉に接近する。日清戦争で負傷し、軍医だった幸吉の父に治療を受けた過去がある。

 最初、望月少将の階級は大佐の予定でしたが、他の軍人・兵と区別しやすくするため、帽子が赤い将官(少将・中将・大将の総称)に変更しました。役回り的には、少将ではちょっと階級が高すぎて不自然なのですが、フィクションですし志織の洋装同様に見た目のわかりやすさを重要視しました。 

 現在の日本と、明治時代の日本での大きな違いの一つに『軍隊』の存在があります(自衛隊はなんぞや?の論争はここではしませんが…)。「未だ二流国の日本が世界に認められるには戦争に勝ち我が国の国力を示すことが必要なのだ!」のセリフは、帝国主義さなかの世界で、いつ欧米列強の植民地にされてもおかしくない後進国である当時の日本の現状と、それに対する明治政府の焦り、軍隊の重要性を表しています。

 飛行機の軍事利用を幸吉に断られてしまい、力ずくで徴収しようと暴走してしまう望月少将。飛行機への威嚇射撃の際「人(幸吉)には決して当てるな」の指示を出してはいますが、昭和初期に「お国のために」の下に国民を抑圧した軍隊の慢心が、この時すでに現れています。志織の父に「その国のための軍隊が、その国の民の味方になれないでどうする。それを忘れた軍隊は、自らの国を滅ぼすぞ」と諭されますが、その言葉はこの物語の40年後、太平洋戦争で現実となるのです。

 日露戦争で陸軍内部では想定されていなかった旅順要塞の攻撃の必要と苦戦の可能性、そして何よりも誰も信じなかった飛行機の成功と有効性を見抜くなど、卓越した先見性を持つ優秀な人物ですが、物語の性質上『敵役』となってしまった、ちょっと可哀想なキャラクターです。 

望月少将の部下・兵隊

↑望月少将の部下たち。

 設定図では大尉になっている角田さんは、望月少将の昇級のためバランスを考え少佐へ昇格しました。そのため原稿ではちょっと歳を取らせています。第一・第二小隊長はご覧の通り『零戦 —レイセン— 』に登場した真二と早見大尉のお父さん。第一小隊長は真二のお兄さんに似せています。真二君は母親似だったのでしょうか? ま、この辺は『遊び』と言うことで…。

←兵隊さん。

 志織などの着物姿も描くのが難しかったですが、軍服も大変でした。映画『日本海大海戦(1969年・東宝)』や『二百三高地(1980年・東映)』、中西立太さんの著書『日本の軍装』を参考にしました。(『日本の軍装』は『零戦 —レイセン— 』でも参考にさせていただきました)

 本来、歩兵はもっとたくさん装備を持つのですが、本格的な戦闘での出動ではないので(それ以上に描くのが大変ですので)簡素化しました。後編・33ページの1コマ目の緑色の帯の帽子をかぶっているのは、赤十字のマークでわかるとおり衛生兵です。